2020振り返り

「お前はいつまで会社で働いているのか?」
「この先もソフトウェア・エンジニアリングの仕事を続けるのか?」
「前よりマシになるのではなく、大きな目標はないのか?」
もうひとりの自分からの問いかけは何年も前から度々聞こえてきました。

2017年に転職したとき、それらの質問に答えられませんでした。 熟慮はしましたが、前よりマシになる思考しかできませんでしたし、この分野を生涯続けるという意志も持てませんでした。

突然現れ世を席巻している COVID-19 によって、私は通勤と出張から開放され、人生の優先順位について考える時間を得ました。 結果、経済に参加しない自由を持つという大きな目標を立てました。 もともと、会社で働くということは 他人のやりたいことに加担すること であり決して自分のやりたいことではないと考えていたこと、 アウトドアの YouTuber を何年もたくさん見ていて自給自足への憧れがあったこと、 在宅勤務を始めたのと同時にあつ森を始めたこと、 7月から実家の庭を借りて家庭菜園を始めたこと、それらが重なって目標を持つに至りました。

それは 2020/07/29 のツイート群に表れています。

  • 分業というと「この光ってるのは何の機械かわかる?マジな話おれはわからない。でもそれってクールなことなのさ。知る必要が無いのだから。」というバンドマンが言っていると思しき画像が第一に浮かぶ。そう、より自身の関心に集中するために、何かを任せてきたことはクールだと共感できる。
  • ある人の層が限りある時間を何かの分野に集中し、ときには別の何かに集中した層と議論し、知見を体系だてて発展してきたことによる恩恵は、日常生活に溢れている。
  • それができる基盤となったのは「あるプロセスを担当します」という主体が織りなす経済だ。そして、ラーメンも、Tシャツも、スマホも、個人で使うものは簡単に手に入れられるが個人だけの力では手に入らない世の中になった。
  • あるプロセスを担当する組織に貢献をすることは程度を問わなければ大抵の人にはできて、その対価としてラーメンやTシャツやスマホに変換できる貨幣を得られるようになった。
  • それをクールとは言えない価値観が私には芽生えてきている。ただし、分業による恩恵を否定するのではない。個人の生に対して部分的、関節的なプロセスに関わるか関わらないか、選べる自由を獲得することが次の Society, Industry のメジャーバージョンアップだと考える。

いきなりその姿になることはできないと考え、次のように目標を分解しました。

  • 自給する食料を増やすこと
  • 首都圏から海のある郊外に引っ越すこと
  • フルタイムからパートタイムになること
  • わがままを通すだけのスキルを身につけ、知ってもらうこと
  • 作る活動を増やすこと

これらについて、2020年のうちにどこまでできたのかを振り返ることにします。 目標を持った7/29より前のことについても、目標に寄与したことについて記します。

自給する食料を増やすこと

実家の庭を借りて経験ゼロから野菜を育て、土地さえあれば野菜の自給は不可能ではないと結論づけました。200m2 以上あれば、ですが。 2020年に着手した野菜は次の通りです。まずは育てられるかを確かめることを目的としたので多くの種類に手をつけました。

野菜 収穫成否 状態 雑感
ミニトマト 手をかければ多く収穫しやすくなる
きゅうり 瀕死 育ちは非常に良いが農薬必須な気がする
パプリカ 育ちが悪い
とうがらし 勝手に育つ
明日葉 x 育ちが悪い
パクチー 本場数枚までは案外繊細、あとは簡単
バジル 瀕死 案外繊細
ミニチンゲンサイ 簡単
葉ねぎ 簡単
レタス 簡単
小松菜 葉物の中でも一番簡単
ほうれん草 × 難しい、収穫ならず
ブロッコリー 苗から収穫まで3ヶ月、害虫駆除必要
えんどう豆 × 瀕死 豆苗から再生中、全然育たない
かぼちゃ × 買ったものの種から育成中
にんじん × 買ったもののヘタから再生中
キャベツ × 苗から育成中

葉物が一番育てやすいですね。特に小松菜は強い。スーパーで買ったものの切れっ端を植えると1ヶ月でまともな大きさになります。 同じ葉物でもほうれん草だけは育てられませんでした。

夏野菜と言われるものも1月現在そのままにしています。ミニトマトもきゅうりも11月、12月でも収穫できました。ただし育ちが悪くなりました。

害虫対策も学びました。以前はかわいい遊び相手だったバッタ君もただの害虫としか思えなくなり、見つけ次第殺すだけの存在になりました。 葉の裏に隠れているナメクジと青虫も潰すことも覚えました。 アブラムシだけは手で駆除することはできず、オルトランを使いました。 無農薬志向では全くないので躊躇はありません。

雑草を使ったマルチングも覚えました。草マルチと呼ばれているようです。覆わなかった箇所と比べると効果はあるようです。

肥料は安物の化成肥料とハイポネックスを月に1回使いました。違いがわかるような実験をしなかったので効果はわからずじまいでした。

コップひとつからはじめる 自給自足の野菜づくり百科 という本が参考になりました。個々の野菜の育て方だけではなく、どれだけの広さの土地のどこに何を植えるかという設計が書かれています。

動画では Self Sufficient Me をよく見ました。オーストラリアでの広い庭があることが特徴で、育てやすい品目、再生栽培、土作り、3週間の野菜自給自足生活が役立ちました。

塚原農園 というプロの農園チャンネルもよく見ました。大量に作ること以外はすべて参考になりました。それ以外にも近所の畑を写すことがあり、どれもレベルが高く見えるので参考にしました。

手間をかけた時間は週に2回30分ずつです。水やりはその時と雨任せでした。 7月は全く晴れず根腐れしてしまう懸念がありましたが生き抜いてくれました。 毎日面倒をみる必要はないと思います。しいて言えば害虫が多い時期は毎日10分でもチェックするのが良さそうというくらいです。

首都圏から海のある郊外に引っ越すこと

リモートワークをしながら郊外にある実家の野菜を毎週見にいくとなると、実家に引っ越した方が合理的です。 また、実家の庭は借りているもので、本格的に育てるときには自分で土地を買うつもりです。 自給ができるほどの量を育てるには200m2は欲しいので、自分の資産を考えると郊外でないと手に入らなそうです。

畑に適した土地と広さがあり、住める古家または住居建築OKという物件は多くありません。 さらに、海の近くに、車で30分で行ける場所に住みたいとなると、条件は狭くなります。 いくつかの不動産サービスを見張ったり、そこに載っていない土地を含めて足で探したりしました。

農地を借りる手も考えましたが、個人向けには手に余る広さばかりでした。 ではシェア畑ではどうかというと高くつくことがわかりました。 値段と広さについて丁度よいところがないかと探すと、市営の家庭菜園がありました。 それを借りるにしても郊外でないと良いところがありません。

結局、5ヶ月ほど探して候補は見つかったのですが、そのような物件の数が少ないだけに相場がわからず、それ故に資産の多くを払う決断ができていません。

フルタイムからパートタイムになること

週に何日働くかは経済に関わらない自由に関する主要なメトリクスと捉え、週5日というフルタイムから減らすことを目標としました。 また、自給ができるとしても何年も先の話でしょうから、当面は収入を下げるとしても一定まで、かつ総量は下がっても時給を下げないことを絶対条件にしました。

現職でそれができるかわかっていません。できないかもしれません。 できないなら転職するしかないので、条件に合う仕事があるのか探しています。 まだ納得できる候補は見つかっていません。

わがままを通すだけのスキルを身につけ、知ってもらうこと

  • リモートワーク
  • パートタイム
  • フルタイムの収入から下げない

という条件を通すには、雇用側から見て相応のスキルが必要でしょう。 身につけるだけでなく、こうやってブログに書いたり、LinkedIn のレジュメを更新したりすることによって雇用側に知ってもらうことも必要でしょう。 現職での交渉や転職活動よりもこちらが優先と考えています。 なので、この節についてはおそらく一般のブログを持つソフトウェア・エンジニアが書いているであろう学んだ技術や実績といった内容になります。

  • 情報処理学会 ソフトウェア・エンジニアリング・シンポジウム2020 にて論文発表:医療機器ソフトウェア開発を対象とした包括的アセスメントのケーススタディ
    • 大きな開発組織におけるプロセスの現状認識を工夫した事例を記したものです
    • これを書くためにアセスメントの本を10冊くらいつまみ食いしました (CMM, CMMI, SPICE, SaPID)。知識は増えましたが、肝心の知りたかった包括的なアセスメントにおいて適切に現状認識する方法が書いてある本には出会えませんでした。DevOps 実現の文脈でバリューストリームを描く本があれば、そっちの方が合致しているのかも。
  • Azure DevOps
    • 論文にある改善活動に関連して Azure DevOps を採用、現在でも欠かせない仕事道具になっています
    • 全員で使うツールを採用して実際に全員で活用できる状態に持っていくという経験は貴重でした
    • もともと使っていたツールからの乗り換え、セキュリティとメンテナンスに関する業務も経験できました
  • Azure の学習
    • Azure DevOps の使用を機に、7月に AZ-900 に合格、12月に AZ-400 に合格
    • Azure DevOps のコミュニティ TFSUG に参加
    • ほか、Connpass で Azure 関連の勉強会に参加、Cloud Skills Challenge (取り組み中)
  • アジャイルとプロジェクトマネジメントの学習
  • プログラミング
    • チケット~リポジトリ~チャットまわりを Python
    • コードを書く専門のポジションではないので機会が多いわけではないが必要
    • 機会を増やしたいところ。機会を増やすには「あ、それできますよ」って言ってサッと作ってスッと出せることが必要。
    • Python 力というよりはライブラリ力かも
  • 英語
    • 海外の大学で2時間の講義とワークショップを担当した。正直能力不足だと思うけど面白そうだったので飛びついた。相手もネイティブじゃないのでどうにかなる感じ。楽しかった。
    • もっと日常でも英語で話す仕事が欲しいところだけどない。お金払って機会を作るしかないのか、そこまでするか?と二の足を踏んでいる。筋トレのためにジム行きたくないのと同じ感覚。
    • 読む機会は論文かニュースか…といっても量が全然足りてない気がする
    • 聞く機会はYouTube…家庭菜園の参考にした Self Sufficient Me もその1つ。ただ映像と字幕で意味をつかんでいるから英語に勉強にはなっていないような気がする。
  • GitHub

果たしてこれらが私のわがままを通すだけのスキルを身に着け、知ってもらうことについて十分かというと疑わしい。 自分ならではのテクノロジーメソドロジーを打ち出せれば文句なしと考えます。 ツールを作って本を書くのが一番いいでしょうか。

作る活動を増やすこと

食料以外も自給できれば多少は経済から距離を置けるか?と思いついて木工に手を出しました。 ホームセンターで木材を買って部屋で使えるものを作る程度ならできるようになりました。 流木を使って材料を自給したいところですが、まっすぐ切ることが難しい壁がクリアできていません。

何かに影響を受けたかというと例えばこういった YouTube チャンネルです。

自給という言葉に焦点を当てるなら別のチャンネルもありますが、段階的に移行するのが無理だし最終目標もこうではありません。 * Primitive Technology * Primitive Skills

あとはこんなオモチャも買ったんで、海中を撮ってみたいな。 2020は家庭菜園を優先したので全然行けてませんが。

2021年は?

  • 野菜を1/4くらい自給できている
  • 海のある郊外に引っ越して畑を持つ

これは踏ん切りさえつけばできるだろうか。

  • フルタイムからパートタイムになること

目処がありません。引き続き模索します。

  • わがままを通すだけのスキルを身につけ、知ってもらうこと

着手しやすいのはこっち。現職+個人活動でがんばります。 とりあえず見えてる個人活動は AZ-204 をとって AZ-400 と合わせて DevOps Engineer Expert の認定を受けること、DASA の資格、とある洋書の翻訳。 現職は何か出せるかなあ。国際会議に通したいな。

  • 木工DIYででかいものを作る

野菜の次は卵かなと思っていて鶏小屋を流木で作ったろかと妄想してます。 が、野菜の次なのでまだまだ。

既に海中映像のチャンネルっていっぱいありますけど、演出なり釣り人目線なり潜水ポイントなり、まだまだやりようはあるはず。

やるなら YouTube オーディオライブラリの聴き飽きた曲じゃなくて自分で作りたいな。

鬼が笑い出したのでこの辺で。