全身麻酔で親知らずを3本抜いた

親知らずを一度に3本抜くというのも、全身麻酔をするというのも、入院するというのも初めての体験だったので記しておきます。 これを書いているのは術後1ヵ月~2ヵ月です。結果から書くと手術はうまくいき、そこまで辛くはなく、やってよかったと思っています。

手術をした経緯は、親知らずの前の歯が痛んで近くの歯医者を受診したことに始まります。 その歯を治療をしたいのですが、後ろの親知らずを抜かないと治療ができないことがわかりました。

以前に1本だけ親知らずを抜いたことがあります。 そのとき、治療器具を奥に入れられると吐きそうになることがわかりました。嘔吐反射が一般人よりも強いらしいです。 当時は我慢を重ねてどうにかなったのですが、ものすごく辛くて同じ苦しみを耐えられるかわからなかったので、楽な方法がないか助けを求めました。 そういった場合、全身麻酔下で手術をするという手があるそうです。 全身麻酔をする際には泊りがけの入院になるとのこと。 そこで「そんな大掛かりなことをするなら残りの親知らずも全部抜いてください」とお願いし、大きな病院を紹介されました。

いきなり入院をするわけではなく、全身麻酔ができるかどうかを検査しました。 血液や心電図までとられたのですが、そういうものらしいです。 麻酔医から麻酔時に行うこと、検査の理由、リスクについて丁寧な説明を受けました。

この検査と説明を受けてから入院をするまでの間は2週間ほどだったでしょうか。 入院、全身麻酔、手術というのは初めてのことなので、予習でもしておこうと YouTube を見ることにしました。 世の中は YouTuber だらけなので "親知らず全部一気に抜いた" といったものがあるだろうと踏んで探したところありました。 あるもんですねえ。

全身麻酔で親知らず3本一気に抜いた結果・・・ - YouTube

私の場合、1日目は主に検査、2日目に入院、最後の3日目は午前中に退院するというスケジュールでした。

1日目:準備

10時ごろに病院へ。病室は個室で、ベッド、トイレ、クローゼット、貴重品入れがあります。 個室といってもホテルのように鍵つきのドアがあるわけではなく、入口にはカーテンがあるだけです。

食事は昼食と夕食の2回。 病院食はおいしくないものと知人からは聞いていましたが、意外とそうでもありませんでした。

この日は検温や血圧測定などの簡単な検査、麻酔医の問診、執刀医の問診、歯のクリーニングがありました。 それら以外は暇です。 術後何日かは満足に食事をとれなくなるだろうからと考え、 ちょうど YouTube で公式配信されていた孤独のグルメをずっとみていました。

2日目:手術

いよいよ手術当日。6時30分に起床。早い…早すぎる…といっても看護師が各病室を周るだけで、二度寝してよいとのことでした。 この日は朝食と昼食はなく、水を飲むこともできません。 水を飲めない代わりに点滴があります。たしか10時ごろに点滴の器具を腕に設置しました。 そして手術着に着替えました。見た目は完全に病人です。 私の番は前の手術が終わり次第だそうで、何時に始まるか決まっていませんでした。 結局10時ごろに準備ができてから手術が始まるまでに3時間くらい経ったでしょうか。とにかく暇でした。

手術のお呼びがかかったときには「待ってました!」という気持ちで手術室に向かいました。 自分で歩いて手術室に入り、自分で手術台に上がりました。 テレビドラマなどで見る患者はことごとく手術室に運ばれていたのでどこか新鮮でした。

手術台に上がると「これから麻酔薬を入れていきます」と告げられ「はぁい、おねがいします」と応えました。 その次の記憶は病室に戻されるときでした。その間のことは何も覚えていません。

病室に戻されるとき、おそらく2人か3人がかりでベッドに私の体を置こうとしていたのだと思います。 看護師らが私の体を動かす瞬間、私はタイミングを合わせて「せぇのッ…」と言ったのを覚えています。 看護師らが「運ばれる患者が "せぇのッ" って言うのは珍しいねえ」と言っていたのも覚えています。

ほか、ベッドに戻って直後のことはよく覚えていません。 手術が終わったこと、何やらマスクのようなものをつけていることだけわかりました。 しばらくすると思考がはっきりして、不快感が出てきました。 抜歯箇所の痛みはそれほど強くないのですが、口に血がたまっていたり、 喉にも血か淡がたまっている感覚がありました。 そして、それらを吐き出したいのですが、体がうまく動きませんでした。 あれこれどうにかしようとしているうちにシーツを真っ赤に汚してしまいました。 さらに、頭痛がして熱も出てきたので抗生物質を投与しました。 これが術後2時間後のことです。

さらに2時間ほど経つと夕食の時間となり、8時間ほど付き合った点滴も終了です。 この日は朝も昼も食べていないのですが食欲は全くありません。 術中に口をずっと開けていたせいなのか、口の端が切れていてかさぶたになっているので口が満足に開きません。 抜歯箇所は糸で縫ってあるそうなのですが、常に少しずつ出血しているので血の味がしています。 抜歯箇所が鋭く痛いわけではないのですが、常に鈍い痛みがあって口を動かしたくありません。 それでも食べないと治らないと考え、一口噛んで飲み込むごとに気力を振り絞り、完食しました。 前日と違って料理は全て細かく刻まれており、米は米でもおかゆでした。 健康であれば5分や10分で食べて終えてしまいそうな料理でしたが、このときは30分以上かかった覚えがあります。 看護師は完食したことに驚いていました。

食後は調子がよくなり、病室から出て休憩室でコーヒーを飲んだり、家族に手術が終わったことを連絡したりしました。

3日目:退院

この日も6時30分に起床し、朝食までの間しばし二度寝。 痛くて目が覚めるかもしれないと懸念していましたが杞憂に終わりました。

朝食は手術当日の夕食と同じく全く箸が進みません。 相変わらず口は開かないし、血の味がします。 料理も同じく細かく刻まれたり柔らかく煮込まれているのですが、噛んで飲み込むには時間がかかります。 バキという漫画とアニメの作品にて主人公が毒におかされたときの場面を思い出しました。 薬膳料理を「ウマくはないぞ」というセリフと共にふるまわれたり、 恋人に「食ってないじゃん!」と泣きながら叫ばれたりする場面を思い出すと、 食欲そのものは無いものの、治したいという気力が出てきて完食することができました。 病は気からというのはこういうことでしょうか。

朝食後、簡単な問診と直近の生活指導を受け、抜糸の予定日を決めたら退院です。 かかった金額は事前の検査も含めて約10万円でした。病室が個室ではなく相部屋であればもう少し安いでしょう。 虫歯になりやすい親知らずを一気に抜くことができ、その前の歯を磨きやすくなるのであれば安い金額だと思います。 抜歯された親知らずを見ると2本は割られていました。あごの骨を削り、歯を細かくしないと取れなかったそうです。 嘔吐反射のある自分には耐えられなかったのではないかと想像します。 退院後のダメージとして大きいものはありませんでしたが、退院して1週間ほどは集中力が続きませんでした。 それを差し引いても行って良かったと思っています。

さて、親知らずの抜歯は順調に進んだのですが、その前の歯は今でも治療しています。 早く親知らずを抜歯して治療を始めていれば、とほほ。