私がコンピューターで文書を書く方法の変遷

最近になってMarkdown形式で文書を書くことが増えたのですが、改めて考えるとコンピューターを使って文書を書く方法は多様であって、それらの方法をどれだけ経験しているかも人によって様々ではないかなと考えることがあります。

例えば、PC上のMicrosoft Officeなどのアプリケーションで書くのか、Google Docsなどのウェブアプリケーションで書くのか、見たまま編集なのか、何らかの書式に従ったテキストを別途レンダリングするのか、といった方法の違いがありますが、どういった方法に慣れ親しんでいるのかは人によって異なるのではないかと思います。知っているのは1つの方法だけという方々もいるでしょうし、複数の方法は知っているけど特定の方法は肌に合わないという人々も、「肌に合わない」という人々をなんとか矯正したい複数の方法をマスターしている人々もいることでしょう。

一昔前はワープロという言葉があり、それが文書作成のスタンダードだったのかもしれませんが、現在ではそれが揺らいでいるのではないかと考えます。コンピューターを使った文書作成の方法をどこで学ぶかというと、学校の "コンピューターリテラシー" などの授業で学んだり、就職してから同僚から学ぶというケースが思いつきますが、そういった場で多様な文書作成の方法を学べるかというと多分必ずしもそうではないのでは?と思います。

私の観測範囲では、方法を問わず書ける人々もいれば、「Google Docs?初めて聞いたよ」「ローカルのOfficeで書いてdocxとかをDriveに置く方が合ってる」「Wikiみたいなのは記法を覚えるのが面倒くさい。」という人々もいます。私はどちらかというと前者の方法を問わず書ける人に属します。

そして、文書作成方法が多様化した現代では、組織によっては上述の文書作成リテラシーの違いによる問題が起きているのではないかと推測します。

本エントリでは、私の考える現状に問題提起をする前に、私自身がコンピューターで文書を書く方法の変遷を振り返ります。

最初はプレーンテキストとTeXだった

初めてコンピューターを使って文書を書いたのは大学1年生のときです。初めて買ったパソコンのOSはWindows98SEでした。また、コンピューターリテラシーという授業があり、そこでもテキストエディタで文書を作成する演習がありました。

コンピューターリテラシーの授業が少し進むと、TeX(てふ)という文書作成アプリケーションを使用して、章や節の見出しをつけたり、画像を貼りつけたり、数式を書いたりする演習が行われました。入学してしばらくすると紙でのレポート提出が必要な授業が増え、TeXでレポートを作成するようになりました。図はTgifというドローツールで描きました。表計算が必要な状況は無かったので、スプレッドシートというものを知らずに過ごしました。

TeXはWordと異なり、決まった形式でテキストファイルを書き、それを別途レンダリングします。TeXを使用できる環境は自宅のPCには無く、大学のコンピューター演習室か、サークルの部室で作業していました。演習室の環境はSolarisワークステーションで、部室の環境はFreeBSDでした。部室にMS Officeの入ったWindows機もあったのですが、体裁のある文書はTeXで作るものと覚えていたので、結局学生時代はMS Officeを使わずに過ごしました。もちろん論文もTeXで書きました。

HTMLで日記を書いた

2000年代初頭ではホームページを作成するのが流行しており、私もそれに乗って作りました。WordPressのような contents management system は存在せず、エディタでHTMLやCSSを書いていました。「TeXとは書式が違うんだな」「リンクが便利だな」「章番号や図表番号を参照するような文書には向かないな」と感じた覚えがあります。ホームページでは日記を書いていました。「授業が面倒」だの、「カレーを作った」だの、取るに足らない内容を書いていた覚えがあります。Twitter と同じですね。

ブログに移行、そしてmixiへ、Wiki

2003年ごろだったでしょうか。日本で幾つかのブログサービスが始まりました。この頃になるとウェブ上で論説文やエッセイなど、それなりの量があって、構造や論理展開がある文章を見るようになりました。そして、多感な大学生らしく「自分もそうした文章を書きたい」と考えるようになり、それまでホームページで続けていた日記をブログに移行しました。ブログ時代は2年くらいは続いたと思います。今はもう残っていません。

ほどなくして日本発SNSの代名詞であるmixiが登場しました。mixiはどちらかというと友人などとクローズドなコミュニケーションを取るために使用し、mixi日記には日常を書き、ブログには長めで一般向けの文章を書いていました。

趣味の活動でWikiも使用しました。簡単な書式でテキストを書くとHTMLに変換されるというのは便利だと感じました。確か、PukiWikiだったと思います。

OpenOffice.org でプレゼンテーション

大学の研究室に入るとプレゼンテーションをする機会が増えました。その研究室では原則的にWindowsが禁止されていたので、Debian GNU/LinuxにてOpenOffice.orgを使っていました。いわゆるOffice系アプリを使用したのはこれが初めてでした。見たままを編集するというのはなかなか軽快で良かった覚えがあります。一応TeXでスライドを作成することもできましたが、見栄えを練るのには向いていないと判断しました。

一方でメモをとるならテキストで十分ですし、レポートや論文を書くならTeXしかないと考え、ワードプロセッサー機能は全く使いませんでした。また、数値計算Pythonなどを使用しており、スプレッドシートも使いませんでした。

就職して初めて Microsoft Office を使った

こうして、大学に入学して初めてコンピューターを使用してから卒業するまで、Microsoft Office に触れないまま過ごしてきましたが、就職して初めて使うことになりました。

初めてWordとExcelを使用したときは新鮮だった覚えがあります。Wordについては「目次はどうやって作るのか?」「なぜ勝手に字下げをするのか?」、Excelについては「セル内でどうやって改行をするのか?」「countifって何だ?」などの疑問に当たり、機能やtipsをググりながら覚えていきました。見出しや図のある文書を作成したり、簡単な表計算をすることは、実務をこなしながら自然とできるようになりました。

そうした中で、Excelで書かれた見出しや構造のある文章、画像を貼りつけただけのシート、全ての行・列の幅を等しく揃えた後にセルの結合機能を使用して表を書いてあるシート、Excelは使用できるがWordは使用できない人々に出会うことがあり、「これは悪い見本なので参考にしてはいけない」と感じたのを覚えています。

Trac の記法や、Redmine の Textile を使うこともありました。

少しだけ Sphinx を使ったこともあります。章や節のある長めの文章は全部 reST になればいいのに、GitHub なんかもサポートすればいいのに、と思いました。

そして現在

現在では GitLab や Qiita:Team などでの Markdown, Word, PowerPoint, Excel, Google Docs などを使用しています。

振り返り、周囲をみると、こういった経験のある人は実はそんなにいないのではないかと思わされます。それぞれは大した経験ではありません。少しトレーニングすればすぐに覚えられることばかりです。ですが、特定の文書作成方法のみ経験している人々がいて、方法が多様化した現在ではついていけない個人がいたり、組織においては支障が出ていたりしないでしょうか?…というのは次の話。